暗号資産投資において、「いつ売るか」は「何を買うか」と同じくらい重要な判断です。

含み益が出ていても、売るタイミングを逃せば利益は消えてしまいます。一方、早すぎる利確はその後の値上がりを取り逃すことにもつながります。利確(利益確定)の判断は、暗号資産投資家にとって常に悩ましいテーマです。

本記事では、暗号資産への投資経験がある733人を対象に実施した独自アンケート調査をもとに、投資スタイル、利確のタイミング、ルールの有無、後悔の実態、情報収集の方法を詳細に分析しています。


調査概要

項目

内容

調査時期

2025年

調査対象

全国の20歳以上の男女 1,230人

有効回答数

733人(暗号資産投資経験者)

内訳

現在も投資している 508人/過去に投資経験あり 225人

調査手法

インターネットアンケート

回答者属性

男性 66.6%/女性 33.4%

年代構成

20代 20.3%、30代 27.7%、40代 25.4%、50代 19.0%、60代以上 7.6%


投資スタイルは「長期保有」が最多|約半数が長期派

投資スタイルの全体分布

現在の投資スタイルについて尋ねたところ、「長期保有が中心」が349人(47.6%)で最多でした。「短期売買が中心」は225人(30.7%)、「両方を使い分けている」は124人(16.9%)、「現在は様子見が多い」は35人(4.8%)となっています。

投資スタイル

回答数

割合

長期保有が中心

349人

47.6%

短期売買が中心

225人

30.7%

両方を使い分けている

124人

16.9%

現在は様子見が多い

35人

4.8%

経験年数との関係

経験年数別に見ると、1年未満の層では長期保有が多い一方、1〜3年未満の層では短期売買の割合が上昇する傾向が見られます。5年以上の層では、再び長期保有が主流となり、「両方を使い分けている」の割合も高まります。

投資を始めた直後は長期保有からスタートし、慣れてくると短期売買に挑戦する人が増え、さらに経験を積むと長期保有に回帰するという投資行動の変遷がうかがえます。


利確タイミング1位は「感覚で判断」|明確な基準を持たない投資家が最多

利確タイミングの全体分布

利確(売却)を判断する主なタイミングとして最も多かったのは、「特に決めておらず感覚で判断」の182人(24.8%)でした。「ニュースや相場の流れを見て判断」が141人(19.2%)、「価格が下がり始めたと感じたとき」が117人(16.0%)と続きます。

利確タイミング

回答数

割合

特に決めておらず感覚で判断

182人

24.8%

ニュースや相場の流れを見て判断

141人

19.2%

価格が下がり始めたと感じたとき

117人

16.0%

利確したことがない

109人

14.9%

目標金額に到達したとき

94人

12.8%

〇%程度の利益が出たとき

90人

12.3%

「感覚で判断」「ニュースや相場の流れを見て判断」「価格が下がり始めたと感じたとき」の上位3項目は、いずれも事前に定量的な基準を設定していない判断方法です。これら3項目を合計すると60.0%に達し、暗号資産投資家の6割が明確な数値基準なしに利確を判断している実態が浮かび上がります。

投資スタイル別の利確タイミング

投資スタイル別にクロス集計すると、利確判断のアプローチに違いが見られます。

短期売買が中心の投資家は「ニュースや相場の流れを見て判断」の割合が高く、市場の動きに機動的に対応する姿勢がうかがえます。一方、長期保有が中心の投資家は「目標金額に到達したとき」が14.0%と、短期売買(10.7%)よりも高い割合です。

長期保有派は出口戦略としてあらかじめ目標を設定する傾向がある一方、短期売買派は相場環境に応じた柔軟な判断を重視しているといえます。

「利確したことがない」も14.9%存在

注目すべきは、「利確したことがない」と回答した人が109人(14.9%)存在する点です。この層は、購入後に一度も売却せず保有し続けている、いわゆる「ガチホ(長期保有)」層と推測されます。

暗号資産投資において、利確しないまま含み益が消失するケースも少なくありません。保有を続けること自体が戦略であるとしても、出口の基準を持たないまま保有し続けることにはリスクが伴います。


利確ルールは約7割が「なんとなく」または「決めていない」|明確なルールは18.6%のみ

利確ルールの有無

利確ルールを事前に決めているかを尋ねたところ、「なんとなく決めている」が373人(50.9%)で最多でした。「決めていない」が193人(26.3%)、「明確に決めている」は136人(18.6%)にとどまっています。

利確ルール

回答数

割合

なんとなく決めている

373人

50.9%

決めていない

193人

26.3%

明確に決めている

136人

18.6%

わからない

31人

4.2%

「なんとなく決めている」と「決めていない」を合わせると77.2%に達します。暗号資産投資家の約8割が、具体的な利確ルールを持たないまま投資を行っている状況です。

投資スタイル別の利確ルール

投資スタイル別に見ると、長期保有派は「明確に決めている」が28.7%と比較的高い一方、短期売買派では10.2%にとどまります。短期売買派は「なんとなく決めている」が67.6%と突出して高く、感覚的・経験的な判断に依存している傾向が確認されました。

投資スタイル

明確に決めている

なんとなく

決めていない

長期保有が中心

28.7%

42.4%

26.4%

短期売買が中心

10.2%

67.6%

20.4%

両方を使い分け

9.7%

51.6%

33.9%

短期売買は素早い判断が求められるため、厳密なルール設定が難しいという側面もあります。しかし、感覚的な判断の積み重ねが後悔につながるケースも多く、後述する「後悔経験」の調査結果と合わせて注意が必要です。

経験年数との関係

経験年数5年以上の層では「明確に決めている」が28.9%と最も高く、投資経験が長い人ほどルールの重要性を認識していることが分かります。一方、1年未満の層でも23.3%が「明確に決めている」と回答しており、投資初期の段階でルールを設定する意識の高い層が一定数存在します。


利確の後悔は76.5%が経験|「ルールあり」でも後悔率87.5%

後悔経験の全体傾向

利確判断に後悔した経験について、「たまにある」が400人(54.6%)、「よくある」が161人(21.9%)でした。合計すると76.5%の投資家が利確判断に後悔した経験を持っています。

後悔経験

回答数

割合

たまにある

400人

54.6%

よくある

161人

21.9%

ほとんどない

118人

16.1%

まったくない

54人

7.4%

暗号資産投資家の4人に3人以上が利確のタイミングに後悔を感じた経験があるという結果は、利確判断の難しさを端的に示しています。

利確ルールと後悔の関係|ルールがあっても後悔は避けられない

利確ルールの有無と後悔経験のクロス集計からは、注目すべき傾向が浮かび上がります。

利確ルール

後悔率(よくある+たまにある)

明確に決めている

87.5%

なんとなく決めている

85.5%

決めていない

59.1%

わからない

29.0%

「明確に決めている」層の後悔率が87.5%と最も高い結果となりました。一見すると逆説的ですが、利確ルールを設定している投資家は「ルール通りに売った後、さらに価格が上昇した」「ルールに従わず売り遅れた」など、ルールと実際の結果を比較して後悔を認識しやすい構造にあると考えられます。

一方、「決めていない」層は59.1%と相対的に低い後悔率ですが、これはルールがないために「比較対象がない」ことで後悔を自覚しにくい可能性があります。後悔率の低さが、必ずしも良い投資判断を意味するとは限りません。

年代別の後悔率

年代別に見ると、20代は82.6%、70歳以上は90.9%と高い後悔率を示しています。30代・50代は71〜72%台とやや低いものの、全年代で7割を超えており、年代を問わず利確の判断に苦戦している実態が分かります。


利確判断の情報源はSNSがトップ|専門家・分析記事は3位

情報源の全体分布(複数回答)

利確判断の際に参考にする情報源として、「SNS(X、YouTubeなど)」が343人(46.8%)で最多でした。「ニュースサイト」が319人(43.5%)、「専門家・分析記事」が282人(38.5%)と続きます。

情報源

回答数

選択率

SNS(X、YouTubeなど)

343人

46.8%

ニュースサイト

319人

43.5%

専門家・分析記事

282人

38.5%

友人・知人

241人

32.9%

特に参考にしない

99人

13.5%

その他

33人

4.5%

利確という投資判断においても、SNSが最も利用される情報源となっています。SNSは速報性に優れる一方、情報の正確性にばらつきがある点には留意が必要です。

年代別のSNS利用率

年代別のSNS利用率を見ると、40代が51.1%で最も高く、20代(46.3%)や50代(48.9%)を上回っています。60代は41.2%、70歳以上では27.3%に低下しますが、60代でも4割以上がSNSを参考にしている点は注目に値します。

年代

SNS利用率

20代

46.3%

30代

44.8%

40代

51.1%

50代

48.9%

60代

41.2%

70歳以上

27.3%

「特に参考にしない」層も13.5%

「特に参考にしない」と回答した人が99人(13.5%)存在しました。自身の判断のみで利確を決定している層ですが、前述の通り「感覚で判断」が最多であることを踏まえると、情報収集の不足が感覚的な判断につながっている可能性も考えられます。


最大の不安は「価格変動の大きさ」|「利確・損切りの判断」も36.6%

不安要素の全体傾向(複数回答)

暗号資産投資で不安に感じていることを複数回答で尋ねたところ、「価格変動の大きさ」が436人(59.5%)で最多でした。「税金・確定申告」が321人(43.8%)、「情報の正しさ」が292人(39.8%)と続きます。

不安要素

回答数

選択率

価格変動の大きさ

436人

59.5%

税金・確定申告

321人

43.8%

情報の正しさ

292人

39.8%

利確・損切りの判断

268人

36.6%

特に不安はない

48人

6.5%

「利確・損切りの判断」が独自の不安項目として浮上

本調査の特徴的な結果として、「利確・損切りの判断」が268人(36.6%)と、投資家の3人に1人以上が不安を感じている点が挙げられます。

価格変動や税金といった外部要因に対する不安に加え、「自分自身の判断」そのものに不安を感じている投資家が多いという結果は、前述の利確タイミングや後悔経験の調査結果と整合しています。


専門情報への利用意向は82.5%|後悔経験が多い層ほどニーズが高い

利用意向の全体傾向

投資判断について専門的な情報や診断があれば利用したいかを尋ねたところ、「機会があれば利用したい」が399人(54.4%)、「ぜひ利用したい」が206人(28.1%)でした。合計82.5%が専門情報への利用意向を示しています。

利用意向

回答数

割合

機会があれば利用したい

399人

54.4%

ぜひ利用したい

206人

28.1%

あまり思わない

94人

12.8%

まったく思わない

34人

4.6%

後悔経験とのクロス|「よくある」層の92.5%が利用意向

後悔経験と専門情報の利用意向をクロス集計すると、明確な相関が確認されました。

後悔経験

利用意向(ぜひ+機会があれば)

よくある

92.5%

たまにある

88.0%

ほとんどない

64.4%

まったくない

51.9%

利確判断に「よくある」後悔を感じている層では、92.5%が専門情報の利用を希望しています。後悔の経験が多い投資家ほど、自分の判断を補完する情報やツールへのニーズが高いことが分かります。

この結果は、投資スタイル診断や利確シミュレーションといった、投資家の判断をサポートするサービスへの需要が大きいことを示唆しています。


まとめ:調査から見えた暗号資産投資家の利確事情

本調査の結果から、暗号資産投資家の利確判断について、以下の5つの主要な知見が得られました。

  1. 利確タイミングの最多回答は「感覚で判断」(24.8%)。 数値基準なしに利確を判断している投資家が6割に達し、定量的な出口戦略が浸透していない実態が明らかになりました。
  2. 利確ルールを「明確に決めている」投資家は18.6%のみ。 約8割が「なんとなく」または「決めていない」状態で投資を行っています。長期保有派は28.7%が明確なルールを持つ一方、短期売買派は10.2%にとどまります。
  3. 投資家の76.5%が利確に後悔した経験を持っています。 さらに、「明確なルールを持つ」層でも87.5%が後悔を経験しており、ルールの設定だけでは後悔を防げない構造が示されました。
  4. 利確判断の情報源はSNSが最多(46.8%)。 40代のSNS利用率が51.1%と全年代で最も高く、利確という重要な判断においてもSNSが最も影響力のある情報チャネルとなっています。
  5. 82.5%が専門情報の利用を希望。 特に後悔経験が「よくある」層では92.5%に達しており、投資判断をサポートする情報やツールへの需要が高い状況です。

暗号資産市場はボラティリティが高く、利確のタイミングは投資成果に大きな影響を与えます。本調査が示すように、多くの投資家が利確の判断に悩み、後悔を繰り返しているのが実態です。

明確なルールを持つだけでは後悔を完全に防ぐことは難しいものの、自身の投資スタイルに合った利確基準を設定し、信頼性の高い情報源を活用して判断の精度を高めていくことが重要といえます。


本レポートは情報提供を目的としており、いかなる投資勧誘や助言を構成するものではありません。暗号資産投資には高いリスクが存在し、投資判断は自己責任で行ってください。本レポートの内容の正確性、完全性、有用性について、いかなる保証も提供いたしません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の判断で行い、必要に応じて専門家の助言を求めてください。