暗号資産の市場拡大に伴い、保有者にとって避けて通れない課題となっているのが確定申告です。しかし、株式投資のような特定口座(源泉徴収あり)の仕組みが整備されていない現状では、自力での損益計算やルールの理解に限界を感じている保有者が少なくありません。

本調査では、現在も暗号資産を利用している335人を対象に、確定申告に対する自信の程度や具体的な不安要素、そして現在取り組んでいる対策について詳しく分析しました。調査の結果、全体の54.0%が申告に対して「自信がない」あるいは「判断できない」と回答しており、所得水準や年齢層によって税務リテラシーに顕著な差があることが判明しました。

また、多くの保有者が「情報の正しさ」に疑念を抱きながらも、SNSやニュースサイトを主な情報源としている危うい現状も浮き彫りとなっています。本記事では、アンケートから得られた生の声をもとに、暗号資産保有者が直面している壁と、それを乗り越えるために求められているサポートの形をプロの視点で考察します。


確定申告への自信は「自信がない」層が半数超

確定申告の自信がある層は4割強

自信の程度

回答数

割合

自信がある

45人

13.43%

やや自信がある

109人

32.54%

あまり自信がない

111人

33.13%

自信がない

54人

16.12%

分からないため判断できない

16人

4.78%

暗号資産を利用している保有者を対象に、確定申告への自信を調査したところ、「自信がある」「やや自信がある」と回答した肯定派は合計で45.97%にとどまりました。一方で、「あまり自信がない」「自信がない」を合わせた否定派は49.25%に達しており、さらに「判断できない」層を含めると、全体の54.03%が申告に対して不安を抱えています。暗号資産取引が一般的になりつつある現代においても、税務申告のハードルは依然として高いままであることが推察されます。

特に「自信がある」と言い切れる層がわずか13.43%しか存在しない点は、制度の複雑さが保有者にとって心理的な重石となっていることの表れです。取引所からの年間取引報告書だけでは完結しない、移動平均法や総平均法による計算の煩雑さが、自己評価を下げている要因と言えます。

適切な計算がなされていない場合、過少申告加算税などのペナルティを課されるリスクがあるため、この「自信のなさ」は看過できない問題です。

年収1,000万円超の層は「自信あり」が6割

世帯年収

自信あり(計)

自信なし(計・判断不可含む)

400万円未満

38.5%

61.5%

400万〜1,000万円未満

44.2%

55.8%

1,000万円以上

62.1%

37.9%

世帯年収別に確定申告への自信をクロス分析したところ、所得水準が高いほど申告に対する自信も高まるという明確な相関関係が確認されました。世帯年収1,000万円以上の層では、62.1%が「自信がある(または、ややある)」と回答しており、年収400万円未満の層の38.5%と比較して、約23ポイントもの大きな開きが生じています。

高所得者層は、暗号資産以外にも株式や不動産などの多様な資産を運用しているケースが多く、税務に触れる機会が多いことが自信の源泉になっています。また、資金的な余裕から税理士等の専門家へのアクセスが容易であり、正確な知識を補完できる環境にあることも、リテラシーの差を生む要因です。

対して年収400万円未満の層で「自信なし」が6割を超える現状は、少額保有者ほど独学での申告に限界を感じている状況を物語っています。所得区分が原則として「雑所得」に分類される暗号資産は、他の所得との損益通算ができない等の特殊なルールがあるため、年収帯を問わず正確な知識の習得が不可欠です。


30代・40代の働き盛りは多忙と複雑な取引が壁

年代

自信あり(計)

自信なし(計・判断不可含む)

20代

51.2%

48.8%

30代

42.1%

57.9%

40代

41.5%

58.5%

50代

48.4%

51.6%

60代以上

55.2%

44.8%

年代別の集計では、30代および40代の層で「自信がない(判断できないを含む)」と答えた割合が、それぞれ57.9%、58.5%と全年代の中で際立って高い数値を示しました。

この世代は仕事や育児で多忙な時期にあたり、煩雑な損益計算に割ける時間が限られていることに加え、複数の取引所を併用して銘柄を分散させるなど、申告内容が複雑化しやすい傾向にあります。本来、正確な申告には全ての取引履歴の集約が必要ですが、その工数の多さが「自信の欠如」に直結しています。

反対に、60代以上の層では「自信あり」が55.2%と過半数を超えており、現役世代よりも落ち着いて税務処理に向き合っている姿が推測されます。投資経験の蓄積や、定年退職等に伴う時間の余裕が、自身の取引に対する正確な現状把握と自信に繋がっているのでしょう。

若年層から中堅層にかけては、自動計算ツールの活用や、情報の取捨選択をいかに行うかが、確定申告のストレスを軽減する鍵となります。


4割超が税金ルールの難解さを痛感

損益計算やルールの複雑さが保有者の心理的障壁に

難易度の感じ方

回答数

割合

まったく難しいと感じない

42人

12.54%

あまり難しいと感じない

125人

37.31%

やや難しいと感じる

124人

37.01%

とても難しいと感じる

44人

13.13%

確定申告を難しいと感じるか調査したところ、「やや難しい」「とても難しい」を合わせた肯定派は50.14%を占め、保有者の約半数が苦手意識を持ってなかでも、「とても難しい」と回答した層が13.13%存在しており、暗号資産特有の計算ルールが大きな負担となっている実態が浮き彫りとなりました。

一方で「難しいと感じない」層も約半数存在しますが、これは取引内容の単純さや、計算ツールの普及による影響が大きいと考えられます。

暗号資産の損益計算は、株式のような特定口座(源泉徴収あり)の仕組みが整っていないため、原則として全ての取引履歴を自身で管理しなければなりません。特に、複数の暗号資産交換業者を利用している場合や、海外取引所を併用しているケースでは、取得価額の計算が極めて煩雑になります。こうした制度上の不備や、算出プロセスの不透明さが、保有者に「難しい」という印象を強く植え付けている主因と言えるでしょう。


41%が制度理解の限界を吐露

不安を感じるポイント(複数回答)

回答数

割合

税金のルールが複雑に感じる

140人

41.79%

確定申告が必要かどうか判断できない

130人

38.81%

取引履歴をまとめられていない

126人

37.61%

間違えた場合のリスクが不安

92人

27.46%

損益計算の方法が分からない

75人

22.39%

どこに相談すればよいか分からない

44人

13.13%

あてはまるものがない

27人

8.06%

具体的な不安要素としては、「ルールの複雑さ」が41.79%で最多となり、次いで「申告の要否判断」が38.81%と高い水準を示しました。暗号資産は所得税法上の「雑所得」に分類されますが、分離課税ではなく総合課税が適用されるため、他の所得状況によって税率が変動する点も理解を妨げる要因です。また、「履歴をまとめられていない」という実務的な課題を抱える層も37.61%に達しており、管理体制の不備が不安を増幅させています。

さらに、27.46%の保有者が「間違えた際のリスク」に恐怖を感じている点は、コンプライアンス意識の高さと同時に、正確な情報への渇望を意味しています。

暗号資産の税務調査は近年強化されており、無申告や過少申告に対する罰則(附帯税)は決して軽くありません。「何が正しいのか分からない」という状態自体が、投資活動における最大のリスクとして認識されている現状が見て取れます。


「情報の正しさ」に47.2%が疑念

よく分からないと感じる理由(複数回答)

回答数

割合

情報の正しさに不安がある

158人

47.16%

ケースごとの説明が多く自分に当てはめにくい

157人

46.87%

情報が断片的で全体像がつかめない

103人

30.75%

専門用語が多く理解しづらい

97人

28.96%

自分の状況に合う情報が見つからない

68人

20.36%

特に困っていない

33人

9.85%

情報を調べても解決しない理由として、約半数の47.16%が「情報の信頼性」を挙げ、46.87%が「自分への当てはめ」の難しさを訴えています。

インターネット上には膨大な情報が溢れていますが、個別のケース(例えばNFTの譲渡やDeFiの報酬など)に対応した解説が少なく、情報の取捨選択が困難な状況です。断片的な情報を繋ぎ合わせても全体像が見えないという不満は、体系的なガイダンスが不足していることを示唆しています。

また、28.96%が「専門用語」を障壁と感じており、初心者層が税務知識の入り口で足止めされている実態もうかがえます。

暗号資産関連の税制は、金融庁や国税庁の指針が更新される頻度も高く、常に最新の情報を追うコストは決して低くありません。情報の非対称性を解消し、個々の保有者が「自分の場合はどうなるか」を即座に判断できる仕組みが、今の市場には強く求められています。

取引の複雑化が申告の壁に

取引回数の多さとDeFi・NFT等の特殊な税務が悩ませる

取引内容の分類

回答数

割合

取引回数が多く、整理が大変だと感じる

91人

27.16%

取引回数が少なく、内容もシンプル

87人

25.97%

取引回数は少ないが、複数の取引所を使っている

84人

25.07%

自分の取引内容が申告にどう影響するか分からない

43人

12.84%

DeFiやNFTなど、税務が分かりにくい取引を含む

30人

8.96%

自身の取引内容を確定申告の観点で分析した結果、27.16%が「取引回数の多さによる整理の困難さ」を最大の課題として挙げています。これに「DeFiやNFTなどの難解な取引」を含む層(8.96%)を合わせると、36.12%の保有者が物理的、あるいは知識的な作業コストの高さに直面していることが判明しました。暗号資産は少額から頻繁に売買できる特性があるため、1年間の取引履歴が数千行に及ぶことも珍しくなく、これが手動での計算を不可能にする要因となっています。

また、25.07%が「複数の取引所を利用」しており、取引所をまたぐ資産移動の把握が申告漏れのリスクを高めています。さらに12.84%は「自分の取引がどう影響するか分からない」と回答しており、基本的な課税タイミング(売却、交換、決済など)の理解が浸透していない現状が浮き彫りとなりました。暗号資産同士の交換も課税対象となる日本独自の税制において、こうした認識の乖離は、意図しない申告漏れを招く危険性を孕んでいます。


損益計算ツールの導入は33.4%

これまでに取った対応

回答数

割合

損益計算ツールやソフトを使った

112人

33.43%

自分で調べながら対応した

107人

31.94%

税理士など専門家に相談した

54人

16.12%

必要になったら考えようと後回しにしている

33人

9.85%

まだ何もしていない

29人

8.66%

確定申告に向けた具体的な行動としては、33.43%が「損益計算ツールやソフト」を導入しており、デジタルツールによる効率化が最も一般的な手法となっています。一方で「自分で調べながら対応」する層も31.94%と拮抗しており、外部サービスに頼らず自力で完結させようとする保有者の姿勢もうかがえます。しかし、暗号資産の計算は移動平均法などを厳密に適用する必要があるため、手動計算ではヒューマンエラーが発生しやすく、ツールの活用が推奨される領域です。

注目すべきは、全体の約18.5%にあたる層が「後回し」や「何もしていない」状態にあるという点です。暗号資産の利益は「雑所得」として他の所得と合算されるため、年間の利益が20万円を超える場合は申告義務が生じますが、期限間際になって膨大な取引履歴と格闘するリスクは極めて高いといえます。早期の履歴整理は、納税額の予測や節税対策(含み損の確定など)を行う上でも不可欠なプロセスであり、放置は将来的な金銭的損失に直結しかねません。


情報源の主流はニュースサイト。51.9%が利用する一方でSNSの偏りも顕著

情報収集の方法(複数回答)

回答数

割合

ニュースサイト

174人

51.94%

SNS(X、YouTube、TikTokなど)

146人

43.58%

仮想通貨の専門メディア

117人

34.93%

取引所や公式サービスの案内

114人

34.03%

税理士や会計の専門家の発信

80人

23.88%

ほとんど情報収集していない

36人

10.75%

普段の情報収集源を調査したところ、「ニュースサイト」が51.94%で最多となり、次いで「SNS」が43.58%と僅差で続く結果となりました。

速報性の高いメディアが好まれる一方で、情報の正確性が担保されやすい「取引所の案内」は34.03%、「専門家の発信」は23.88%にとどまっています。不特定多数が発信するSNSの情報には誤解や古い税制に基づいた内容も混在しているため、参照先が偏ることは誤った申告に繋がるリスクを孕んでいます。

情報収集においては、一次情報である国税庁の指針や、JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)が提供する公式な解説を確認する姿勢が必要です。

利便性の高いSNSや一般ニュースだけでなく、専門家の監修を受けた記事や公的機関のアナウンスをクロスチェックすることが、自身の資産を守るための防衛策となります。

39.43%が専門家によるチェックを熱望

客観的な担保を求める保有者心理

安心できる状態の定義

回答数

割合

誰かに確認してもらえれば安心

132人

39.43%

自分で正しく申告できると分かれば安心

88人

26.27%

ツールで自動的に整理できれば安心

82人

24.48%

今はまだ考えられない

17人

5.07%

多少不安でも、大きな問題がなければよい

16人

4.78%

確定申告において、どのような状態になれば「安心」できるか調査したところ、「誰かに確認してもらえれば安心」と回答した層が39.43%で最多となりました。この結果は、自力での申告に限界を感じている保有者が多く、第三者(専門家)による客観的な「正解」の提示を強く求めている実態を反映しています。暗号資産の税務は解釈が分かれるケースも存在するため、独断で進めることへの心理的ハードルが、外部確認への需要を押し上げていると考えられます。

また、24.48%が「ツールによる自動整理」を挙げており、人為的なミスを排除したいというニーズも根強く存在します。対して「自分で正しく申告できる(26.27%)」という回答は、自律的なリテラシー向上を目指す層の一定の存在を示しています。いずれにせよ、暗号資産保有者が求めているのは、あやふやな判断を排除し、税務当局から指摘を受けるリスクをゼロに近づけるための「確実な手段」の確立に他なりません。


申告対象か判断できる「チェック方法」を47.8%が要望

必要とされるサポート(複数回答)

回答数

割合

自分が申告対象か分かるチェック方法

160人

47.76%

取引内容別の具体的な例

135人

40.30%

全体の流れを整理した分かりやすい解説

111人

33.13%

ツールやサービスの比較情報

110人

32.84%

専門家に相談できる機会

65人

19.40%

特に必要としていない

27人

8.06%

今後期待されるサポートとしては、「自分が申告対象か分かるチェック方法」が47.76%と半数近くに達し、最も高い支持を得ました。暗号資産は所得が20万円を超えた場合に申告が必要となりますが、必要経費の算入範囲や利益確定のタイミングなど、自身の状況が基準に該当するか判断しきれない保有者が多いようです。また、「取引内容別の具体的な例」を求める声も40.30%と多く、抽象的な解説よりも、実務に即したガイドラインが強く望まれています。

さらに、「全体の流れの解説(33.13%)」や「ツールの比較情報(32.84%)」への要望も高く、申告準備の入り口から出口までを網羅する情報提供が求められています。19.40%が「専門家への相談機会」を求めている点は、前述の「確認してもらえれば安心」という心理と合致するものです。複雑な税制を個人の努力だけで乗り越えるのではなく、簡易的な判定ツールや具体的なケーススタディといった、利便性の高いサポート体制の充実が急務といえます。


年収400万円未満の層は「自動整理」を重視

世帯年収

誰かの確認

自分の力

ツールの自動整理

その他(未回答含)

400万円未満

34.6%

23.1%

34.6%

7.7%

400万〜1,000万円未満

41.3%

24.5%

24.1%

10.1%

1,000万円以上

41.4%

36.2%

15.5%

6.9%

世帯年収別に「安心できる状態」を分析したところ、年収400万円未満の層では「ツールの自動整理」を重視する割合が34.6%と、他の年収帯と比較して顕著に高い結果となりました。この層では、高額な報酬が発生する税理士への依頼(誰かの確認)よりも、安価または無料のツールを活用して自律的に、かつ効率的に申告を完結させたいという意向が強いと推察されます。所得金額に対して申告コストが割高になることを避けたい、という経済的な合理性が働いている側面があるでしょう。

一方、年収1,000万円以上の層では「自分の力で正しく申告(36.2%)」の数値が高く、リテラシーの獲得そのものに意欲的な姿勢が見て取れます。全般的に「誰かの確認」への需要はどの年収帯でも4割前後で安定していますが、低所得層ほどツールによる自動化、高所得層ほど知識の習得や外部チェックという、手段の使い分けが鮮明になっています。こうしたニーズの多様化に合わせ、保有者の資産規模に応じた適切なサポートツールの提供や情報発信が、暗号資産市場全体の健全な発展に寄与することになります。

まとめ

本調査の結果から、暗号資産保有者の過半数が確定申告に対して「自信がない」と感じており、その背景には税制の複雑さや計算の煩雑さが根深く存在している実態が浮き彫りとなりました。特に「自信がある」と言い切れる層が13.43%にとどまる現状は、保有者個人の努力だけでは解決しきれない、制度上の理解の難しさを象徴しています。「税金のルールが複雑(41.79%)」や「申告が必要か判断できない(38.81%)」といった不安の声は、市場の健全な発展を妨げる心理的障壁となっている可能性が極めて高いといえます。

一方で、保有者の33.43%がすでに損益計算ツールやソフトを導入し、効率的な税務処理を模索している前向きな姿勢も確認されました。暗号資産の損益計算は、原則として移動平均法または総平均法を用い、すべての取引履歴を正確に集計する必要があります。「取引回数が多く整理が大変(27.16%)」と感じる層にとって、ヒューマンエラーを排除できるデジタルツールの活用は、過少申告や無申告のリスクを抑えるための極めて有効な防衛策となります。

今後、保有者が「安心」して取引を続けるためには、39.43%が望んでいるような「専門家による確認」や、47.76%が求めている「申告対象か分かるチェック方法」の充実が不可欠です。情報の正しさに不安を感じる層が47.16%に達している現状を鑑みれば、SNSなどの断片的な情報に頼るのではなく、公的機関や専門メディアの一次情報を参照するリテラシーが求められます。確定申告は単なる義務ではなく、自身の資産状況を正確に把握し、持続可能な投資戦略を立てるための重要なプロセスです。早期の履歴整理と適切なサポートの活用こそが、将来的な税務トラブルを回避し、投資リターンを最大化させられるかもしれません。