暗号資産では、これまでに大規模な流出や経営破綻など、さまざまな事件が発生してきました。なかには数百億円から数千億円規模の被害に発展し、多くの利用者が資産を失ったケースもあります。こうした問題は過去の出来事ですが、原因や形を変えて今後も発生する可能性があるため、同様の被害に巻き込まれる確率がゼロではありません。

そこで本記事では、暗号資産における代表的な事件を取り上げ、その内容や背景を整理して解説します。過去に何が起きたのかを知ることで、同様のリスクをどのように捉えるべきかを考えるための参考にしてください。

暗号資産における代表的な事件の種類

暗号資産に関する事件は、一つひとつを見ると内容が異なるように見えますが、実際にはいくつかの共通したパターンに分けられます。どこに問題があるのかという視点で整理すると、全体像を理解しやすくなります。

代表的なものは、次の3つです。

  • 取引所の管理体制に問題があるケース(不正流出やハッキングなど)
  • 運営側による不正行為(顧客資産の流用やずさんな管理)
  • 高利回りを謳う投資詐欺(ポンジスキームなど)

例えば、取引所の管理に問題がある場合、利用者自身に落ち度がなくても資産が失われる可能性があります。一方で、投資を謳う仕組みでは「資産が増える」といった話をきっかけに、自ら資金を預けてしまうことで被害に遭うケースが多く見られます。

このように、同じ暗号資産のトラブルであっても、原因や仕組みは大きく異なります。あらかじめ分類を理解しておくことで、どのような場面にリスクがあるのかを把握しやすくなります。

代表的な暗号資産事件の事例

暗号資産のリスクを理解するうえでは、実際に起きた事件を知ることが重要です。過去には、大きな被害を生んだ事例が複数あり、多くの利用者が資産を失っています。

ここでは、代表的な事例を取り上げ、それぞれの特徴や背景をご紹介します。

Mt. Gox事件(不正流出・ハッキング)

かつて世界最大級の暗号資産取引所として知られていたのが、Mt. Goxです。当時は世界中の利用者が資産を預けており、市場全体にも大きな影響力を持つ存在でした。しかし2014年、この取引所で大規模な資産消失が発覚します。

発表によれば、顧客が保有していた約75万BTCに加え、自社保有分を含む大量のビットコインが失われ、被害額は数億ドル規模にのぼるとされました。この影響により同社は経営破綻に至り、多くの利用者が資産を失う結果となります。

問題が明らかになるまでの過程にも特徴があります。出金停止や取引停止が続いた後、十分な説明がないまま状況が悪化したことで、利用者の不安が一気に広がりました。結果として、取引所に対する信頼は短期間で大きく崩れることになります。

原因については、システムの脆弱性を突かれた不正アクセスが指摘されていますが、それだけではありません。長期間にわたり問題を把握できなかったことから、管理体制そのものにも課題があったと考えられています。

この事件が示しているのは、暗号資産のリスクが価格の変動だけではないという点です。資産を預ける取引所の管理体制に問題があれば、利用者自身に落ち度がなくても、大きな損失につながる可能性があります。

Coincheck流出事件(不正流出・ハッキング)

Coincheckで発生した流出事件は、日本国内の暗号資産市場に大きな影響を与えた出来事のひとつです。2018年、外部からの不正アクセスにより、利用者から預かっていた約580億円相当の暗号資産が流出したと発表されました。

流出したのは「NEM」と呼ばれる暗号資産で、ほぼ全額が不正に送金されたとされています。異常が検知されたのは送金後であり、その時点で出金や売買が停止されるなど、サービス全体に影響が広がりました。この事件が注目された理由のひとつが、その規模です。過去の大規模流出と比較しても被害額は大きく、国内における暗号資産のトラブルとしては最大級とされています。

2014年に日本のビットコイン取引所だった「マウントゴックス」が約470億円分を消失させて以来、過去最大の仮想通貨の流出となる。

参照:日本経済新聞

原因として指摘されたのは、資産の管理方法です。暗号資産を外部ネットワークと接続された状態で保管していたことが、不正アクセスにつながった可能性があるとされています。本来であれば、外部から隔離された環境で管理するなど、被害を限定する仕組みが求められます。このような対策が不十分だった場合、ひとつの侵入がそのまま大きな損失につながる可能性があります。

FTX破綻(資産流用・ずさんな管理)

FTXの破綻は、外部からの攻撃ではなく、運営側の問題によって引き起こされた代表的な事例です。

同社は2022年、資金不足に陥り、米国の連邦破産法第11章(チャプター11)の適用を申請しました。提出された資料では、資産と負債はいずれも100億ドルから500億ドル規模とされ、暗号資産業界でも最大級の経営破綻とみられています。

問題の中心にあったのは、資金の管理方法です。報道などによれば、顧客から預かった資産の一部が関連会社に貸し付けられていたとされ、本来は分けて管理されるべき資金が別用途に使われていた可能性が指摘されています。さらに、財務状況の開示が十分でなかったことや、経営を監視する体制が機能していなかった点も問題とされています。

その結果、利用者の間で不安が広がり、資産の引き出しが相次ぎましたが、すでに資金不足の状態にあり、十分に対応できない状況に陥りました。こうした流れの中で経営は急速に悪化し、破綻へと至っています。

この事例が示しているのは、暗号資産のリスクが外部からの不正アクセスだけではないという点です。取引所そのものの運営や管理に問題があった場合、利用者はその状況を事前に把握することが難しく、気づいたときには対応できない状態になっている可能性があります。

Bitconnect事件(ポンジスキーム)

高い利回りを謳って資金を集めた事例として知られているのが、Bitconnectです。

このサービスは2016年に開始され、暗号資産を預けることで利息を受け取れる「レンディング」と呼ばれる仕組みを提供していました。利用者はビットコインを独自トークンに交換し、一定期間ロックすることで日々の利息を受け取れるとされていました。

特に注目されたのは、日利に近い水準の収益が得られるとされていた点です。この利息は「自動取引ボットによって生み出される」と説明されていましたが、具体的な仕組みは明らかにされていませんでした。その後、各国の規制当局から問題視されるようになり、2018年にはサービスの停止に追い込まれます。これを受けて価格は急落し、短期間で大きく価値を失いました。

この事例の本質は、仕組みが不透明なまま高い利回りを謳っていた点にあります。実際にどのように利益が生まれているのかが説明されない状態でも、数字だけで判断して資金が集まってしまう構造が成立していました。

結果として、価格の急落とともに多くの利用者が損失を被ることになります。利回りの高さだけに注目するのではなく、その収益がどのように成り立っているのかを確認することの重要性を示した事例といえます。

PlusToken事件(ポンジスキーム)

ウォレットサービスを装って資金を集めた事例として知られているのが、PlusTokenです。このサービスは2018年に開始され、専用の暗号資産ウォレットを通じて、資産を預けることで定期的な報酬が得られる仕組みを提供していました。主に中国や韓国の利用者を中心に広がり、多くの資金が集まったとされています。

被害額は、当時の価格で約20億ドルから29億ドル規模と推定されています。その後、関係者が各国で摘発されるなど、組織的な不正が明らかになりました。ウォレットのような日常的に使われるツールであっても、資金を預ける仕組みが組み込まれている場合には注意が必要であることを示しています。

まとめ

暗号資産の分野では、これまでに大規模な流出や破綻、資金集めの不正など、さまざまな事件が発生してきました。いずれも形は異なりますが、結果として多くの利用者が資産を失っている点は共通しています。

今回取り上げた事例から分かるのは、リスクの原因が一つではないという点です。取引所の管理体制に問題がある場合もあれば、運営側の不正や、不透明な仕組みによる資金集めが背景にあるケースもあります。そのため、暗号資産を扱う際は、単に価格の動きだけで判断するのではなく、「どこにリスクがあるのか」を考えなくてはなりません。

過去の事件は、単なる出来事として捉えるものではありません。どのような状況で問題が起きたのかを理解し、自分の判断に活かしていくことが求められます。